数年前から関わっている市民団体は話をしても、残念ながら、あまり乗り気でない様子。知り合いの紹介等で何個かの団体にあたって、「これだ!」と思ったのだラキエタ・エイズ対策センターでした。
ラキエタ・エイズ対策センターは都市間バスの運営する会社が母体。都市、時には国境をまたいで仕事をする自社の運転手がHIVに感染したことをきっかけに、この会社の社長はエイズ対策の非営利団体を始めました。エイズ孤児、エイズに影響を受けた、感染した女性への支援。啓発活動等、幅広く、地元にしっかり根ざした活動をしている団体です。バス会社の経営者であるティエンドルベオゴ氏は社会活動に長けているだけでなく、企業の社長としてビジネスマインドもしっかり持ち合わせたバランスのとれた人物。「この人なら」と思わせてくれる人物でした。
現地でのパートナーもみつかり、残すは、現地で石鹸製造をするための施設を確保することが必要でした。しかし、インフラが発展していないブルキナファソ。日本で通用する石鹸を作るための施設を探すことは困難。日本に通用するモノづくりをするための建物を一から建設するしか方法はありませんでした。
森重がこの事業を考え始めた時、2006年に2度目の青年海外協力隊派遣時の配属先であったHIV/AIDS対策支援組織が協力してくれるという話がありましたが、具体的な話を持っていくと、難しい反応。なんせ、森重が作りたいと思っている建物はブルキナファソの人々が想像する石鹸作り用の建物とはかけ離れたもの。通常、屋外で石鹸を作ることが常識の地に、ガラス窓でしっかり密閉した、しかも、作業工程ごとに部屋が分かれた複雑な建物を建てようというのだから、相手のイメージしていた建物とも資金ともかけ離れていました。
落胆した森重。しかし、こんなことで屈する訳にはいきません。次なる可能性を求めて動き出した時、ブルキナファソに新設された日本大使館の当時の臨時代理大使と会うチャンスが訪れました。
オープンマインドでアイディア豊富な臨時大使。森重の事業計画に関心を示してくれました。聞けば、「草の根・人間の安全保障無償資金協力」というスキームで石鹸製造の施設を建設することができるかもしれないと言ってくれたのです。しかし、あくまでも、これは社会的な非営利活動を対象としたスキームで、日本政府が掲げる対ブルキナファソ政府への国別援助計画とも合致した内容でなければいけないということ。「石鹸工場」ではなく、地元の人々の自立に寄与する活動の場でなければいけないとのこと。
そもそも森重の事業は「女性の自立」が目標。持続的であるために、研修にとどまらず、ビジネスに結びつけるもの。HIV/AIDSに影響を受けた、感染した女性のための職業訓練施設として、草の根・人間の安全保障無償資金協力に申請するための準備を始めました。しかし、申請者は森重個人ではなく、あくまでも現地パートナーであるラキエタ・エイズ対策センター。地元に根差した社会活動の場となる職業訓練センター建設への供与を日本大使館にお願いしました。
そして、2009年。草の根・人間の安全保障無償資金協力の供与が決定しました。
日本、ブルキナファソでの活動の場を確保した森重は(株)ア・ダンセを設立します。会社を設立し手ホッとする森重。しかし、本当の苦労はこれから始まります。
ラキエタ・エイズ対策センター関係者
中央がティエンドルベオゴ氏